小さな茎ブロッコリーの苗を植えつける。生命力に溢れた圃場、その草の中に入って渡り合うにはあまりに貧相。だから丁寧に半径10センチほどの草は取り除いて優位性を形成してやる。根がしっかりと活着し成長へと向かうまでの段階で草の海に飲み込まれてしまわぬように。
苗1つ植えるのに手間がとてもかかる。
最近数人の見学者が訪れてくれたが、このやり方については正直言ってあまり勧められない、そう話す。
そんなこと言って・・・ではあなたは何故やってるの?と思われそうだ。Mっ気強いから?とか。
耕して草をなくしてしまえば勿論植えやすい。10倍以上のスピードで植えられるかもしれない。
その上で肥料を入れてやれば、圧倒的優位を保ったまま収穫をむかえられそうに思う。
ところが、敵対する草々は完膚なきまでに叩き潰し、悠々とゴールテープを切る、そんななかでできた野菜がきっと僕は好きになれない。
ギリギリのいい勝負をして最後に勝ってくれたら最高と思う。お互いが良いところを出しつくし、せめぎ合い・・・・・
甘ちゃんといえばそれまでかもしれないが、ボクシングをしていた時、最初にあっさりダウンを奪う、或いは深刻なダメージを与えてしまうと、いつも相手を回復させようと考えた。あ~まだダメダ もっといい勝負しようぜ ・・・
相手の目に力が蘇るのを感じることが好きだった。よおしよおし さあもっと熱くそして深くやりあおうぜぇ~
と、そんなところだ。
まあ、そんなところなのだがレフリーが割って入る(TKO負け)ゲっ!はえ~~
何度かそういうことがあった。
・・・・・
優位性を与えた我がやさいはやがて自立し、対等に戦いを挑むが敵は手ごわい。だから傍らから、本人には気づかれないように手助けする。ギリギリの手助け、ギリギリ勝たせられるように。さじ加減を間違えないように。
僕自身の感性が少し変わってると思う。小さい頃からずっとそういわれてきたし・・。だから、あまり人に勧められない。
それでもありがたいことに、中には共鳴してくれる人がいて、そうして育ったやさいを"違う!”と言ってくれる人がいて、何とか続けていられる。
これをしていることはただの独りよがりではないな、と思えることが少しだけ誇らしい。